いぼ痔(痔核)とは
いぼ痔とは、肛門周辺にイボのような腫れものが生じている状態を言います。排便時にいきむことで肛門の毛細血管が多く集まるところに負荷がかかり、静脈叢(じょうみゃくそう)がうっ血して腫れ上がることが原因です。
直腸と肛門上皮の境目には歯状線があり、歯状線より内側にできたものを内痔核、外側にできたものを外痔核と呼びます。外痔核は知覚神経のある部分にできるため内痔核よりも痛むことがあり、それぞれ症状や治療方法が変わってきます。
内痔核の主な症状
内痔核は肛門内部の粘膜の部分にできるため痛みを感じることがなく、ご自身では気付きづらいですが、出血を起こしやすいため、排便時の出血によって内痔核の存在に気付くことが多いです。進行すると痔核が肛門外部へ出てくるようになり、最初のうちは自然に元に戻りますが、進行すると指で押さないと戻らなくなります。また、進行して炎症を起こすようになると痛みなどの症状が起こることもあります。 内痔核の進行度は下記のようになります。
1度
- イボ状になった腫れが肛門内部に留まり、脱出しない
- 痛みはないが排便時に出血することがある
2度
- 排便時に外側へ脱出するが、自然に元に戻る
3度
- 炎症により痛みを伴うことがある
- 排便時に出血する
- 排便時に外側へ脱出し、指などで押し込まないと戻らない
4度
- 痔核が常に肛門の外側へ脱出している
- 痔核を指などで押し込んでも内部へ戻らない
- 嵌頓痔核 (内痔核が外側へ脱出して肛門を閉じる筋肉に締め付けられ、腫れ上がっている状態で、激しい痛みを生じます。)
外痔核の主な症状
外痔核は知覚神経のある部分にできるため痛む場合が多く、炎症が起こった場合は激しい痛みを生じることがあります。
腫れが強くなるにつれて痛みも強くなります。
血栓性外痔核
排便時に強くいきんだり、重いものを持ったりすることが原因で、肛門周辺に血の塊が生じている状態です。
少し違和感を覚える程度のものから激しく痛みを起こすものまであります。
いぼ痔の治療法
ジオン注射
(ALTA療法)
内痔核の治療として行われており、痛みもほとんどありません。再発率が10%ほどありますが、同じ治療を再度受けることもできます。
注射することで内痔核の脱出や出血の改善が期待でき、治療後は翌日から普段通りの生活を送ることができます。
結紮切除術
内痔核、外痔核の両方の治療として最も利用されており、一時的な緩和ではなく根本の改善が見込め、再発率も低いです。
ただし、痔核を結紮(けっさつ)するため痛みや出血することがあり、治療後は排便障害が残る可能性もあるため、内痔核だけの場合はジオン注射を推奨しています。
※手術が必要な場合は連携する高度医療機関を紹介させていただきます。
ジオン注射+結紮切除術
ジオン注射で内痔核、結紮切除で外痔核をそれぞれ治療するため、内痔核と外痔核を同時に発症している場合に適している治療法です。
根治できる可能性が高く、術後の痛みや出血も比較的抑えられます。
※手術が必要な場合は連携する高度医療機関を紹介させていただきます。
ACL(肛門クッション
吊り上げ術)法
痔核を吊り上げることで元の位置に戻す治療法であり、肛門機能へのダメージも少ないです。切らないため出血や痛み、傷跡が残るということはほとんどありません。
輪ゴム結紮術
内痔核の根本の部分を輪ゴムで縛り、血流を止めることで痔核を自然に脱落させる治療法です。ただし根治性が低く、痔核が元の状態に戻ることも多いです。 また、痔核が脱落するまでの数日間は便秘や下痢などを起こさないように、排便をコントロールする必要があります。
PPH法
肛門周囲の皮膚を切開せず、直腸粘膜と血管をリング状に切除して吻合(ふんごう)し、痔核を正常な位置まで吊り上げることで退縮させる治療法です。皮膚を切開しない分、痛みを抑えられます。